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人の死に瀕して最も相応しく悲しんだのは、やはり恋人の小林だった。彼は彼女に駆け寄ると目尻から涙を溢して、声を震わせた。
「彼女はきっと後悔していたんですよ。学業は優秀な成績で、研究についても期待され、それに応えようと無理をしてしまったんだ。その不正を自分の罪として忘れずにずっと後悔し続けていたのに、こうして世間の知る所となってみて、取り返しがつかないのだと目の当たりにして、彼女は自分の身に背負える限界を超えてしまったんです。その張り詰めた思いを僕が受け止めてあげられたらよかったのに。僕もこんなふうに伝えたりしなければ。知らせるタイミング次第では彼女の気も変わっていた可能性だってあったんだ」
教授は、小林が語る後悔の弁を黙って聞くよりほかになかった。
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