3.何故

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3.何故

小林が語るのを聞いて、太田はニヤニヤして、何か勿体ぶっている様子で口をはさんだ。 「お取り込み中すまないんだけど、彼女が自殺だと判断するのは早いよ。首を吊ったというならわかるけど、使われたこの紐、長さは十分にあるけど、天井に掛かっていたわけではない。物騒な話だけど殺害されたなんてことも考えなくちゃいけない。可能性の話ですけどね」 太田は博士課程に進んで何年も研究室に居座っているため、研究室が違うとはいっても小林以上に教授との付き合いは長い。こういうきな臭い話をすると、この教授はなんとか誤魔化そうとするのを知っている。 「しかしな、不正が知れ渡れば彼女は停学になるかもしれないし、そうなると彼女のもらっていた奨学金も停止されてしまう。彼女はバイトや親への仕送りもしていたというし、将来の就職にも影響する。そんないくつものことを考えると、彼女が思い詰めるのも無理のないことに思えてくるよ」 教授は『殺害』という言葉を打ち消すように、やはり自殺だと言いたげに説明をした。密室の中に人が一人だけいて死んだということなら自死と考えるのは自然なことだが、その部屋には人型AIロボットもいたということが少々話を複雑にしている。
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