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◯
大学に入って初めての夏休み。
八月も終盤に差し掛かった頃、運命の日はついにやってきた。
「だーいじょうぶだって、みさきち! 留学だろうがホームステイだろうが、やってみれば意外と何とかなるもんだって!」
成田空港のロビーで両親に見送られた後、半べそをかく私に舞恋は明るい声で言った。
この頃にはすでに彼女からも私の英語力のなさを見抜かれており、何も隠す必要のなくなった私は半ば開き直るようになっていた。
「無理だよぉ~~。無理、無理! やっぱり私には無謀だったんだって。英語もわかんないし人見知りだし……。日本にいるだけでもパニックになること多いんだから」
「そうは言ってもさ、もう離陸しちゃったんだし後戻りはできないよ。そろそろ腹くくったら?」
舞恋の言う通り、私たちを乗せた飛行機はすでに日本を発っていた。
機内では色んな国の人が謎の言語でやり取りしているけれど、帰りたい帰りたいと後ろ向きになっているのは私一人ぐらいのような気がする。
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