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Chapter #1
最初は、ほんの冗談のつもりだった。
大学の掲示板に、短期留学の希望者を募る案内があって、
「留学とか、一度は行ってみたいよねー」
なんて口にしたのが間違いだった。
別に本気で言ったわけじゃない。
軽い気持ちで、それこそ『死ぬまでに一度は火星に行ってみたいよね』ぐらいの夢見心地で言ったつもりだった。
当時は大学に入ったばかりで、気持ちが浮かれていたのもある。
普段は気が小さくて存在感の薄い私だけど、ほら、意外とアクティブな面もあるんだよ! と半ば見栄を張るような心持ちだった。
プチ大学デビューみたいなものだと思う。
けれど、言った相手がまずかった。
大学のゼミで思いがけず再会した、小学校時代の幼馴染――舞恋は、それこそ『アクティブ』を絵に描いたような女の子だった。
思い立ったらすぐ行動。
少しでも興味が湧いたら一直線に突き進む、いわば猪突猛進型の女子大生。
気になる異性にはすぐさま声を掛け、好きなアーティストのライブのためなら日帰りだろうと飛行機に乗る。
今回の留学の件も、彼女の興味レーダーに見事に引っかかったらしい。
「うん、やろうよ留学!」
彼女はその瞳をキラキラとさせながら、私の肩をがっしりと掴んだ。
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