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◯
翌朝、大学へはスコットが車で送ってくれることになった。
というのも、レベッカの勤務先が大学の敷地内にある郵便局だというのだ。
彼女を送るついでに私も一緒に乗せてもらえば一石二鳥ということである。
キャンパスは山の上にあり、私たちを乗せた車は緩やかな斜面をぐるぐると登っていく。
車で約五分、歩いても約二十分程度で着く場所に、それは姿を現した。
グリフィス大学『マウントグラバット』キャンパス。
グラバット山、という山の上に建っているから、その名前になったらしい。
「Take care, honey.」
車を降りる直前、スコットはそう言って助手席のレベッカにキスをした。
ほっぺやおでこではなく、口と口。
真正面からのキスだ。
チュッ……と甘い音が車内に響き、後部座席で荷物をまとめていた私は固まった。
実の両親のキスシーンさえ見たことがなかった私にはちょっと刺激が強すぎた。
レベッカは何事もなかったように車を降り、
「Misaki, come on!」
呆気に取られていた私を呼ぶ。
なんだか朝から大変なものを目の当たりにした気分だったが、彼らにとっては普通のことなのだろう。
(これがカルチャーショックか……!)
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