Chapter #1

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   レベッカに途中まで道案内をしてもらい、別れた後は一人で広場の方へ出る。  するとそこには、すでに数十人もの留学生らしき人々が集まっていた。  パッと見た感じではアジア系の人が多かったが、たまにそれ以外の人も目に入る。  おそらくは皆、私と同じでクラス分けのテストを受けに来たのだろう。  ガヤガヤと賑やかなその場所では、たどたどしい英語があちこちから聞こえてくる。 「おーい、みさきちー!!」  と、周りの喧騒に負けないくらいの声量で、聞き慣れた声が私を呼んだ。  見ると、離れた場所からこちらへ一直線に舞恋が突進してくる。 「みさきちー! 会いたかったよおぉ~~!!」  ガバッと勢いよく抱きついてくる舞恋。  さっそく異国に馴染んでハグを習得したのだろうか。 「もう聞いてよみさきち! 昨日から今日にかけて散々だったんだから!」 「散々?」  そういえば、と昨日のメッセージを思い出す。 「確か、『泣きそう』ってメッセージくれてたよね。何かあったの?」 「何かあったどころじゃないよ。本当にひどいんだよ。昨日なんてさ、ホストファミリーの人たちと外食に出掛けたんだけど、その間に家に泥棒が入ったんだよ!」 「泥棒!?」  想定外の展開に、思わず身構える。  
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