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そうこうしているうちに、周りの人たちがゆっくりと前進を始めた。
どうやら大学側から案内があったようで、先頭を歩く人が校舎の中へ入って行くのが見える。
「舞恋、ほら。私たちも行かないと」
「テストなんて気分じゃないよ~~」
うな垂れる舞恋の背中を押し、私たちも周りに続く。
(そういえば、カヒンは来てないのかな……)
彼もこの大学へ留学に来たと言っていた。
ならばクラス分けのテストも受けに来るはず。
けれど辺りを見渡しても、それらしき姿は見当たらない。
「どしたの、みさきち。何か探し物? ……あ、もしかして例の彼を捜してる?」
めざとく言い当てられて、私は返事に詰まった。
そんな私の反応に満足したのか、舞恋は急に上機嫌になって、
「ほらぁ、やっぱり彼のこと気に入ったんじゃん~」
と、先ほどまでとはまるで別人のように嬉々として私に絡んでくる。
こうなると面倒なくらいにしつこいのだ。
「だから、そんなんじゃないって……!」
ほとんど反射的に否定しようとした、その瞬間。
「Misaki!」
と、どこからか男の人の声が届いた。
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