Chapter #1

40/56
前へ
/245ページ
次へ
   列はどんどん進み、やがて階段を上り始める。  方角的に、カヒンのいる教室へと向かっている気がする。  彼に会えるかもしれない——そんな期待が胸を掠めたそのとき。  私の目の前に、大学のスタッフらしき人が割り込んできた。 「×××× ××××!」  何か指示を出しているようだった。  けれど、早口すぎて何を言っているのかわからない。  両手をぶんぶんと振って右の方向を示しているので、ここから道を右に曲がれということだろうか。  そっちに行けばカヒンとは別の部屋になってしまう。  しかも、 「えっ、ちょっとやだ。みさきち!」  スタッフが割り込んだのは、私と舞恋の間だった。  前方で焦る舞恋の声には構わず、スタッフは私以降を右へと誘導する。  有無を言わさぬ圧がちょっと怖い。  流されるまま、私は右奥の方にある教室へと向かった。  中は待機室になっており、数分ごとに一人ずつ別室へ呼ばれるらしい。  見知らぬ外国人たちに囲まれて、私はひとりぼっちになった。  カヒンに会えるどころか、まさか舞恋とも離れ離れになってしまうなんて。
/245ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加