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 太陽の力を持つ国、ソレーユ王国。その王都防衛騎士団に、『薔薇の剣士様』と謳われる美しい女性がいた。  彼女の名は、クロエ・フローレス。  彼女の艶やかな薔薇色の髪は、高い位置で結い上げられ、歩く度にゆったりと揺れる。そして、氷のように透き通ったアイスブルーの瞳は、見るものを惹き付けて離さない。更に、高身長でスラリと長い手足を持つその身体が、彼女の美しさを倍増させていた。  クロエが町を歩くと、誰もがその優美で無駄のない所作に釘付けになる。彼女の周りだけ、常に世界が輝いているように見えているのだ。 「見て……!クロエ様、リンゴ買ってる」 「やばい。ただのリンゴなのに、宝石に見えてきた……」 「クロエ様の美貌、今日も輝かしいわぁ……」  町娘達がクロエに見とれていると、その視線に気づいたクロエが彼女達に柔らかく微笑む。 「キャー!こ、こっち見たぁっ!!」 「ま、眩しすぎて見れない!!」 「バカっ!クロエ様の微笑み、目に焼き付けなさいっ!!」  町娘達が顔を赤くして騒ぐ一方で、クロエは涼しい顔で店主の男にお金を渡していた。 「ありがとうございます」 「いえいえ!剣士様、またいらして下さいね」  店主に微笑み、店を後にしたクロエは、どういう訳かスタスタと町娘達に歩み寄っていく。 「え?く、クロエ様……?」
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