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「レオ」  クロエが騎士団宿舎に戻り、ある部屋の扉を叩くと、レオと呼ばれた青年が顔を出した。  天使の羽の如き、フワフワとした真っ白な髪を揺らし、長い睫毛が際立つ藤色の瞳をクロエに向けるレオ。彼は、クロエがリンゴを持っていることに気づくなり目を輝かせた。 「クロエ、そのリンゴ……」 「レオと食べたくて買ってきたんだ。レオ、リンゴ好きだよね?」 「う、うん!えっ、僕も食べていいの?」 「そのために買ってきたんだよ」 「わぁ……ありがとう、クロエ!」 「……うん」  ふにゃりと笑うレオを見つめるクロエの瞳は、先程町娘達に向けたものとは、明らかに異なるものだった。  愛おしさの滲んだ、心底幸せそうな微笑み。彼女にこの笑顔をさせることができるのは、レオただ1人。  愛してる。抱きしめたい。守りたい…………そんな気持ちを堪えながら、クロエはレオを見つめる。  王都防衛騎士団所属、回復魔道士レオ・ケリー。彼こそが、クロエが世界で1番愛している存在である。  クロエ・フローレスは麗しい。しかし、その正体はただの恋する乙女なのである。
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