18人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ
1
太陽の力を持つ国、ソレーユ王国。その王都防衛騎士団に、『薔薇の剣士様』と謳われる美しい女性がいた。
彼女の名は、クロエ・フローレス。
彼女の艶やかな薔薇色の髪は、高い位置で結い上げられ、歩く度にゆったりと揺れる。そして、氷のように透き通ったアイスブルーの瞳は、見るものを惹き付けて離さない。更に、高身長でスラリと長い手足を持つその身体が、彼女の美しさを倍増させていた。
クロエが町を歩くと、誰もがその優美で無駄のない所作に釘付けになる。彼女の周りだけ、常に世界が輝いているように見えているのだ。
「見て……!クロエ様、リンゴ買ってる」
「やばい。ただのリンゴなのに、宝石に見えてきた……」
「クロエ様の美貌、今日も輝かしいわぁ……」
町娘達がクロエに見とれていると、その視線に気づいたクロエが彼女達に柔らかく微笑む。
「キャー!こ、こっち見たぁっ!!」
「ま、眩しすぎて見れない!!」
「バカっ!クロエ様の微笑み、目に焼き付けなさいっ!!」
町娘達が顔を赤くして騒ぐ一方で、クロエは涼しい顔で店主の男にお金を渡していた。
「ありがとうございます」
「いえいえ!剣士様、またいらして下さいね」
店主に微笑み、店を後にしたクロエは、どういう訳かスタスタと町娘達に歩み寄っていく。
「え?く、クロエ様……?」
最初のコメントを投稿しよう!