カカシは笑う

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アンドロイド案山子が来てから、私は毎日キシマのおばさん家の田んぼに行った。 本格的な夏の暑さになってきて、キシマのおばさんを含む農家の人たちが、何度むしっても生えてくる草と虫たちと戦っている様子を見るようになった。 学校帰り、日が伸びてゆっくりできるようになった私は、あぜ道を通っておばさんの近くまで来ていた。休憩していたおばさんを覗き込む。 「おばさん、こんにちは」 「あぁ、ナギハちゃん。アイス食べるかい?」 「食べる!」 私の答えに笑って、クーラーボックスからアイスを出してくれた。少し溶けかけている。それでも、学校から歩いてきた私にとっては冷たく美味しいものだった。 田んぼで食べるアイスは、少し不思議な味がした。 目の前にあるアンドロイド案山子を観察する。人間そっくりで、時折まばたきなんかもしている。あまりにも、人間に似すぎていて気味が悪い。 そんなことを考えながら眺めていると、馬鹿らしい考えが頭に浮かんだ。 「アンドロイドが意思を持って、勝手に動き出したらとても怖いだろうなあ。人間が制御できなくなったら、どうなるんだろう」 「そんなこと起こるはずがないよ。ロボットは所詮ロボット。機械なんだから。アンドロイドでも意思は持たないし、命令されていないことはやらないよ」 「そっか。そうだよね」 おばさんの言葉に安心して笑う。何でこんなこと思ったんだろう。そんな訳ないのに。 また案山子を見ると、何だか目が光ったような気がした。 あれ? と思ってもう一度見ると、何も変わらない。光の反射だったのかな?
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