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カーテンを開けると、晩秋の夕暮れが近づいていた。
そのままベッドで寝ているスマホを拾う。メッセージの着信が三件。いずれも金の催促。知果からの脅しだ。
俺の彼女である知果は、俺の昔の浮気によって精神バランスを崩した。結果、散財することでしか平常心を保てなくなった。
今までに渡した額は、優に五百万を超えている。いくら親から援助してもらっても、一大学生に過ぎない身には大金だ。友達にも借金をし、未だ返せていない。もう借りられる友達もいなくなり、それでも知果に無心されるたび、渡すしかなかった。
贖罪という言い訳で自分を説得できなくなっていた。だがそれを彼女に告げると、責められ、罵倒され、自殺をほのめかされる。
俺は逃げ場所が欲しかった。もう十分に苦しんだのだから、誰かに優しくされたかった。
そんな折、映美と出会った。
同じ大学の同期生。映美は人の痛みを分かってくれる、気立てのいい素直な女だ。
浮気によって知果を壊した俺だが、終わりない無心に疲れていた。自分でもひどい男だと思うが、すでに知果を取立て屋のように感じていたため、映美の優しさに甘える弱さを否定できなかった。
次の金を最後に別れてくれ。そう宣言して迎えた今日、俺は一つの約束を果たすため、とある場所へ向かうことになっていた。
決別の贖罪として知果に百万円を渡す。だが、もうそんな金は用意できない。
俺が友達から借金しまくっていた事実は大学でも広まっていて、窮状とその理由を知っている者も多いからだ。
すると、天から甘い糸が垂らされた。
毒を含んだ糸。
琴吹利奈と名乗る女が、百万を用立ててくれる代わりに、復讐の手伝いをしてほしいと持ち掛けてきたのだ。
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