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良薬は口にニガシ
「うわぁ、苦いっ。薬師さん、これは飲みにくい。けど、こんだけ苦きゃ早く良くなるだろうな。昔っから“良薬は口に苦し”って言うもんな」
足の骨を折った患者は、薬師の煎じた薬を飲むと満足して帰って行った。
「薬師さん、これ、全然苦くないけど本当に効くの?あんた、ヤブじゃない?」
大きな出来物ができた患者は、薬師の煎じた薬を飲むと、不満気に帰って行った。
大きな出来物ができた患者は翌日もやって来た。
薬師は黙って煎じた薬を差し出した。
「うわぁ〜、これは飲み込めないほど苦い!これは飲めない。いやぁ、でも薬師さん、やっと改心してくれたんだね。これはいい薬だ。これですぐ治る」
大きな出来物ができた患者は、時間をかけて苦い薬を飲み干し、満足気に帰って行った。
患者が帰った後、ゴリゴリとすり鉢で薬の調合をしている薬師に、弟子が尋ねた。
「センブリ、ゲンノショウコ、ニガヨモギ、キダチアロエ……お師匠さま、これは何のお薬ですか?」
スンッと澄まして薬師が答えた。
「ただ苦いだけのお茶だよ」
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