ニキくんのプレゼント

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 七夕の夜です。 「ねぇ、リリ」 「はい、何でしょうか」 「ただいま」 「おかえりなさい」  ニキくんが家に帰ってきました。  ニキくんはいつも私に、ていねいに「いってきます」や「ただいま」を言ってくれます。  きっと、毎日ちゃんと言いたいのでしょう。「いってらっしゃい」「おかえり」って。ニキくんが下校する時分には、まだお父さんもお母さんも仕事中です。だから、代わりに私に言うのです。私も、精一杯の誠意をこめて「おかえりなさい」と言うのですが、なにせオモチャのロボットなものですから、登録された音声しか出せません。つい東京になじみきれていない若者のような発音になってしまいます。誠意というものが伝わると、よいのですが。  いつもだったら「はー、お母さん早く帰ってこないかなあ」なんて言いつつゲームをするニキくんですが、今日は違いました。 「ふふふ、ふふふ」  カバンを片付けて、今日は制服もちゃんと着替えて。しかもそれは、お出かけ着では?ニキくん、鏡を見ながら髪をきれいに整えます。  そして、暗くなった部屋のカーテンを全部閉めます。暗くなったらカーテンを閉めるのは、ニキくんの役目でした。
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