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ママのおくすり
「ママ、ぽんぽん、痛い」
小さい頃は、よくお腹をこわした。
そんな時、ママは私とママのお腹がくっつくようにギュッと抱きしめて、背中を優しく撫でてくれた。
「ママとぽんぽんくっつけてるとあったかいね。ママのお腹のポカポカが伝わるかな。もうすぐ治るよ」
そう言って、ママは私にお話してくれたり、歌を歌ってくれたりしながら、痛みが納まるまで、長い時間でもお腹をくっつけてくれる。
ママは毎日、抱きしめてくれた。
お友だちとケンカした時、飼っていた金魚が死んでしまった時。
悲しい時だけじゃなくて、テストで100点を取れた時、身長が伸びていた時も。
ある時、照れくさくなってママに言った。
「もう、ギュってしなくていいよ」
ママは少し寂しそうに笑うと、言った。
「ママのギュはね、あなたが元気に成長できるおくすりよ。そうだね。もうそろそろ要らないかな。でも、覚えておいてね。おくすり欲しくなったら、いつでもおいで」
ママのギュはおくすりだったんだ。
毎日ではなくなったけど、いまでもたまに、ママにおくすりを貰いに行ってみたりする。
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