ママのおくすり

1/1
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

ママのおくすり

「ママ、ぽんぽん、痛い」  小さい頃は、よくお腹をこわした。  そんな時、ママは私とママのお腹がくっつくようにギュッと抱きしめて、背中を優しく撫でてくれた。   「ママとぽんぽんくっつけてるとあったかいね。ママのお腹のポカポカが伝わるかな。もうすぐ治るよ」  そう言って、ママは私にお話してくれたり、歌を歌ってくれたりしながら、痛みが納まるまで、長い時間でもお腹をくっつけてくれる。  ママは毎日、抱きしめてくれた。  お友だちとケンカした時、飼っていた金魚が死んでしまった時。  悲しい時だけじゃなくて、テストで100点を取れた時、身長が伸びていた時も。  ある時、照れくさくなってママに言った。 「もう、ギュってしなくていいよ」  ママは少し寂しそうに笑うと、言った。 「ママのギュはね、あなたが元気に成長できるおくすりよ。そうだね。もうそろそろ要らないかな。でも、覚えておいてね。おくすり欲しくなったら、いつでもおいで」  ママのギュはおくすりだったんだ。  毎日ではなくなったけど、いまでもたまに、ママにおくすりを貰いに行ってみたりする。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!