病気になりたい魔王様！

「ああ、病気になってしまいたい……」

　ある日、魔王様が鬱々とした表情で呟いた。魔王様に仕える参謀は驚き、そして動揺した。
　まさか、あの豪胆な魔王様もついに、現代社会の闇に飲まれてしまったのか？
　ストレスからくる鬱病というやつにかかってしまったのか？
　まさに今、魔王軍は世界征服を行う為、勇者と戦っている真っ最中である。魔王様が鬱病になったなどということになってしまったら、魔王軍の士気が駄々下がりになってしまうことは間違いない。
　これはまずい。参謀は、魔王軍で一番の老医師を連れて魔王様と謁見した。とにかくカウンセリングを行い、ストレスを取り除き、魔王様に元気になってもらわなければいけない。

「魔王様、一体何があったのですか？勇者との闘いはこれから本格化するのです。そんな時に病気になってしまいたいなんて！悩み事があるなら何でも言ってください。そして、何か欲しいものがあるのならわたくしどもに御申しつけを！」
「そうです、魔王様。貴方が倒れたら、私達は希望を失ってしまいます！」

　参謀と医者は必死で訴えた。すると魔王様は暗い顔で、実は、と告げる。