ダイイングメッセージ

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「そんなことより、デートしよう、幸守くん______」まったく空気を読まない左門寺は変わらずその要求をしてくる。幸守はため息をつきながら、「まず、その“デート”って言い方やめろ」と注意した。そして続いて、「あと、こんな雨降ってんのにどこがデート日和なんだよ」と言った。 「君も“デート”って言ってるじゃないか」 「人の揚げ足取るなっての。第一、どこ行くの?行きたいとこでもあんの?」 「小樽だ。小樽に行きたい。今日は水族館に行きたい気分なんだよ」 「小樽?こんな雨の日にか?」 「あぁ。君の運転で行こうじゃないか」 免許を持っている人ならご存知かもしれないが、雨の日の運転は結構神経を使う。スピードを出しすぎればハイドロプレーン現象が起きるし、ましてや今日のような横殴りの雨の場合、フロントガラスには激しい雨が当たって前なんて見えないことがある。別に幸守はペーパードライバーなわけじゃないから運転できないわけではなかったが、できればしたくない天気であった。このまま聞かなかったことにして寝てしまおうかとも思ったが、また耳元で囁かれて起こされるのも目覚めが悪い。どうしたもんかと考えた結果、往復のガソリン代、水族館への入場料などはすべて左門寺の驕りという条件を付けてそれを了承したのである。 そして、幸守は運転手として左門寺のわがままに付き合うことになったのだけれど、その際にこの二人は災難に見舞われ、その結果、ある事件に遭遇することになるのだ。 それは、水族館を一通り楽しみ、帰路に着くため小樽を出てすぐのところでのことである。 幸守の車のタイヤがパンクしたのである。スペアのタイヤを持参していなかったこともあり、完全な立ち往生となってしまったのだ。
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