ダイイングメッセージ

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ザァザァと音を立てて降る雨は、どんどんその勢いを強めていく。二人はすっかり諦めて、この状況を次第に受け入れ始めた頃のこと。 厳ついエンジン音が聞こえ、ブロロロ……という音を響かせて幸守の車のすぐ真横を通り過ぎていく真っ赤なスポーツカーを見つけた。一見して、あれは外車であった。 「おい、左門寺!車だ!今車が通っていったぞ!」 幸守のその興奮した様子に圧倒されて、左門寺も外の様子を見る。「外車みたいだね」と左門寺は言った。 その真っ赤な車は丘を登ってその上にある洋館のような建物の方へ向かった。もちろん、その建物の存在についても、左門寺と幸守はわかっていた。ただ、その建物の中は真っ暗だし、誰かいるようには到底思えなかったから、諦めていたのである。 「あの洋館の方に向かったね」 「そうみたいだな。行ってみるか?」 幸守と左門寺はその車の行く末を見ながら、互いに顔を見合わせる。 この状況で“行かない”なんて選択肢があるのか______?と左門寺に聞かれ、幸守は、だよな。と言って彼と共に車を降りる。 ザァザァという音を立てる雨に、幸守と左門寺は持ってきていた上着をそれぞれ頭から被り、雨避けにしたのだが、所詮その上着も布であるから、それと共にそれを頭から被っている本人たちも濡れてしまう。 「これじゃ意味ないな!」 「だが、あの洋館までの辛抱だ!」 雨で滑る路面を精一杯足で踏ん張りながら丘を登る。その丘を流れる雨の水は、まるで川のようになっていた。 その丘の林を抜けて、その洋館の目の前までやってきた二人は、その洋館の前に停められた真っ赤なスポーツカーを見つける。幸守は「さっきの車だ」と言うと、左門寺は「やっぱり外車だ」と続けて言った。
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