死の確率

２

　殺人だけではない。誘拐、連れ去りや暴行傷害までを対象にすれば、ここ暫くは連載を続けられるのではないかと思うほど、件数は増えていた。現場の位置情報も同時に取得できるから、取材も効率的と言えばそうだ。
　問題なのは、殺人事件などが起こった場所はそのまま残る事はなく、大抵は建物が建て替わったり、更地や空き地になってしまう事だった。都市開発で周辺の景色がすっかり変わってしまう事もある。

　今日行った現場もそんな場所だった。
　そこはゼロ年代の最初の頃に、小さなコンビニで銃殺事件があった場所だ。何人もの店員や客が被害にあったが、郊外で夜の事案だった事もあり、目撃者も無く、そのまま継続捜査となった。
　訪れた現場は既に空き地になっていた。隣に時間貸しの駐車場があるが他にはこれと言った建物もなく、アスファルトの間から雑草が伸びて風に揺れていた。
　人に言われなければ、そこで殺人があったとは誰にも気づかれないだろう。何よりも時の流れがその事実を遠くに押し込めている。