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 俺は川瀬と、暫く周辺に人が通りかからないかを待ったが、平日の昼間という事、この数年で高齢化が進んで転居も増えたとあって、その気配すらなかった。  俺はカメラを構え、コンビニがあった方にレンズを向けた。そこには今は何もない。何も無いが、濃密に空気が淀んでいるのが感じられる。この連載を持つようになってから、現場に踏み込むとこんな感覚に捉われる事が多い。怨念や霊感などといったオカルト的な感覚ではなく、本当に空気が重くのしかかって来るように感じられるのだ。それは晴天でも、夜であっても変わらない。そこで人が殺された。人が死んだ。そこに横たわっていた何かの痕跡、気配がそのまま「残っている」。それを感じるのだ。 「なんだかうすら寒いような所ですね」  現場で川瀬は自分の二の腕を擦るようにしながら言った。自分達は確かに、この場所で殺人があったのを知っている。その事で余計にそう感じるのかもしれないが、過去にも数回、こういう体験をした。
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