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 都内の住宅街で家族が全員惨殺された現場。女子高生が監禁され、暴行の果てに殺され埋められた現場。一方は廃屋になり、他方は完全な空き地になっていたが、今回と同様の気配を感じずにはいられなかった。その皮膚感覚が文章となり、結果あの本が読む者を引きつけたのかもしれない。それは「死の気配」とでもいうものだ。何の慈悲も無く殺された人々の、明かされない真実が知られていく。  くすんで何かの染みになったような天井を見上げながら、どうにも居心地が悪くなった俺は、もうひとつ息をついて、ディスプレイに目を向けた。報われない人々の為にも、このルポを続けるのだ。  コンピュータを音声入力状態にし、俺は次の取材先候補を告げた。 「未解決の殺人事件。地域はこの近隣だ。小さな事件の方がいい。刑法上の時効があった時期のものでも構わない」  俺の言葉がそのまま画面にタイピングされて行き、カーソルが暫く、点滅していた。俺は喉の渇きを覚え、デスクの端に置きっぱなしになっていたペットボトルの茶を飲んだ。生温く、苦味があった。  AIが答えを出した。 「一件該当しました。場所は○○区??台△丁目…」
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