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AIの合成された音声が読み上げた場所は、このビルの、今俺がいる場所の住所だった。
「おい、ちょっと待て。ここで殺人があったって言うのか」
「被害者は男性、四十代前半です。血液型はAB。後頭部を鈍器で殴られ、その後刺殺されています。全身を刺され、死因は出血多量による失血死。周辺住民にも目撃者は無く、継続捜査になった模様です」
自分が今いる場所が、かつての殺人現場だったというのか。俺は息を呑んだ。この古ぼけたビルが、或いはこの前に立っていた建物なのか。天井の黒ずみが、妙に不気味に感じられた。
「被害者の身元は?ここに住んでいたのか」
少し間があった。
「被害者の住所は別です。この地点には、仕事で通っていたと思われます。職業は写真家、作家、筆名今岡憲治、本名は」
「おい」
思わず俺は遮っていた。AIは読み上げを止め、カーソルを点滅させている。
「それは、その事件が起こったのは、いつの事だ?」
「……警察の発表では、西暦二〇二三年、八月三日未明となっています」
「冗談よせよ」
俺は椅子に背中を預けた。その日付はまだ来ていない、未来の日付なのだ。
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