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 喧噪の中から酒涸れた女の声が耳に飛び込んできて、俺は気づかれないように安堵した。声の主は六月ジューンというストリッパー兼女優だった。地方の寂れた成人映画館を巡る特集をやった時に、誌面に華を持たせる為に取材をした事があった。それ以来、時折取材を兼ねて映画館の舞台挨拶や劇場に行ったりしている。そう言えば、彼女たちストリッパーを撮影して個展を開いた若い女性カメラマンの訃報を、聞いたばかりだった。 「センセが主賓なんだから、来ないと話にならないでしょ?川瀬くん困ってンんだから」  今夜は取材の後、上野で増刷記念のちょっとした祝賀会を開く予定だった。明るいその声に、俺は救われた想いだった。 「悪い悪い。ちょっと疲れちゃってな。川瀬に謝っといて」  おどけて言ってみても、胸の裡は穏やかではなかった。 「大丈夫?特別ゲストもいるから、早くね」 「おう、楽しみだな。それじゃ後で」  こんな場所からは、すぐに逃げ出したい気分だった。俺が何をした?事実とその印象を、文章にまとめているだけだ。
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