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この連載を始めるにあたって、出来る限り主観や情緒的な表現を排して、客観的な紀行文に近いものを心掛けてきた。そこに死体があったかどうか。その違いだけだ。それは罪だろうか。
「なぁ、人はどうして人を殺すんだろうな」
AIにするような質問ではないと思いながら、俺は訊いた。また、暫く間があった。
「様々なケースがあります」
「そりゃ、そうだろうな」
「人間以外の動物は、生存の為に捕食したり、それが適わない場合に共食いをしたりします。人間だけが、生存目的以外で同族を殺すと考えられます。日本では年間二八五件の殺人が行われており、これは先進各国に比べて少ないと言われていますが、所謂過失や不審死を件数に含めていないという説もあります」
聞いていて嫌になる話だった。
「もういい。
さっきの話だが、もし俺が死ぬ……殺されるとして、その確率は、高いのか?」
「確率は高いと考えられます。残念ですが」
「お前には時間が見えるのか?」
日はますます暮れ、室内はこのディスプレイのあるデスク以外は闇に包まれている。窓外から濃い蒼の闇が這い寄ってくるかのようだった。
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