五流小説家の運命

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 あれ?  ちょっと待て。  そういえば……。  ……Web小説を投稿し始めた頃の、初めての推理小説。  短編ではあったが、その主人公の名前は……『(うらら)』だ。  私は慌ててその作品に目を通す。  この頃はまだ短編しか書いていなかったという事もあるが、思いつくままに作品を書いていたので、プロットというものが残っていない。  あぁ、確かに中学生の『麗』が事件を解決へ導いている。  いや、この麗は『麗』とは別人だ。全く別の作品なのだ。  ……主人公の名前が被ってしまったのだ。  ―――どうする。  今、私は2つの選択肢を前に悩んでいる。  ①名前が同じなのは偶然で、全くの別作品だと正直に話す。  ②中学生の『麗』が大人になった作品だ、と軌道修正する。  ①を選択してしまえば楽ではあるが、『麗』の成長を喜んで楽しみにしてくれている読者が1人でもいるとわかってしまった以上、悲しませたくない。裏切りたくない。  ②を選択したとしても、運よく中学生の『麗』には名字を付けておらず、家庭環境なども明記していないので、今日までの公開分との食い違いはない。  ただ問題なのは、中学生の『麗』は好きな男を救うために必死になって推理をしていた事だ。  明日の公開分で麗は「だって私、恋なんてしたことが無いもの!」とカミングアウトする。これがまた今後の展開に重要なセリフで…。  ②を選択すると、カマトトぶることになる。  いやいや、麗はそんなキャラじゃない。  ―――どうする。どうする。
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