#3 ダークグリーンに染まるとき

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今日一日の授業が終わり家に帰ってきた。 早速蒼空くんから借りたノートを取り出して表紙をめくる。 丁寧で読みやすい字が並んでいる。 結局、小説はすぐに読み終えてしまった。 内容は記憶障害をもつ男の子がたくさんの夢を叶えていくというもの。 どんな困難にもとにかく諦めず立ち向かっていくというストーリーがなんだかすごく蒼空くんらしいなと思った。 でも一つ気になったことがあった。 それはノートの裏表紙のところに「記憶がなくなってもとにかく慌てないこと」という文章が書かれていたこと。 なんのことだろう。 でもきっとこの後のストーリーのメモとかかな。 この時の私はこの一文をそこまで気に留めていなかった。 ──また次の週の月曜日── 「蒼空くん!」 図書室に着いてすぐに名前を呼ぶ。 「ん、どうしたの?」 前と違って今日はすぐに出てきてくれた。 私は蒼空くんにノートを返す。 「これ読ませてくれてありがとう!すごく良かったよ!」 「ほんとに?それならよかったー。実はめっちゃドキドキしてたんだよね。人に見せるの初めてだったから。こちらこそ読んでくれてありがとう!」 蒼空くんは一気に笑顔になった。 私はまたドキッとする。これだけのことで笑顔になってくれるんだ。 きっと今まで笑顔にあふれる幸せな人生を送ってきた人なんだろうなと思った。 でもそれは違った。 ただの私の偏見でしかなかった。
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