#3 ダークグリーンに染まるとき

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あれは私が返却された本の点検をしていた時だった。 蒼空君に「美桜ちゃん、ちょっとこっち来てくれない?」と呼ばれた。 私はてっきり本を運ぶのを手伝ってほしいのだと思い、すぐに向かった。 だけど私が向かったとき、なぜか蒼空くんは一人で席に座っていた。 「どうしたの?」 蒼空くんは何も返事をしない。私はまたからかわれたのかと思い、 「なんだー、何も用事ないんじゃん。」とまた自分の仕事に戻ろうとした。 しかし、「あのさ、出来れば軽い気持ちで聞いてほしいんだけど。」と蒼空くんは話を切り出した。 いつもの蒼空くんとは何かが違った。 さっきまでの笑顔の蒼空くんはそこにはいなかった。 どうしたんだろう。気になったけれど、彼がなにか覚悟を決めようとしているのを感じ、私は待ってみることにした。 すると蒼空くんは私が考えてもみなかった事実を口にした。 「僕さ、軽度認知障害っていう少し前のことを忘れちゃう障害があるんだ。」 突然のその言葉に私は何も返すことができなかった。 図書室の静かな沈黙の中、予鈴のチャイムだけが鳴り響いていた。
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