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惚れ薬
「ふふふふふ」
アニメでよくいる悪役みたいに笑ってしまう。笑いが込み上げてきてしまうんだからしょうがない。
だって、ようやく惚れ薬を手に入れたんだから。
魔法使いが持っているようなそれっぽい瓶。そこには日本語で『惚れ薬』と書いたラベルが貼られている。ちょっと怪しいけど本物のはずだ。本物じゃないと困る。お年玉、全部つぎ込んだんだから。
だけど、本物かどうかはちゃんと確かめたい。
「まずは……」
私は呟く。
いつも、私の顔を見ると逃げていく近所の地域猫の通り道に、惚れ薬の入った牛乳を置く。ちなみに私は猫好きなのだが、なぜか猫に嫌われるという悲しい性を持っている。
実験するにはちょうどいいってことだ。
この惚れ薬は、よくお話なんかである飲んだ後に初めて見た人のことを好きになるとかじゃなくて、私限定で好きになる。特注品だ。
みんなからエサをもらって、地域猫にしてはふっくらしたトラ猫が歩いてくる。毛並みもふわふわで撫で回したいわがままボディだ。
トラ猫が私の置いた牛乳に気付いた。
「……よし。飲め~飲め~」
私は物陰からトラ猫を見守る。私が近くにいたら逃げてしまうと思ったからだ。
トラ猫は牛乳の入った容器の前で少し立ち止まった後、ちゃっちゃっと音を立てて牛乳を飲み始めた。
「よしっ」
私はガッツポーズをする。
飲んでしまったらこっちのものだ。
「猫ちゃ~~~ん」
私は文字通りの猫なで声でトラ猫の前に姿を現す。いつもなら、私の顔を見た途端にさっさと行ってしまおうとするトラ猫だけど……、
「にゃ~~~~ん」
今日は甘えた声を出しながら、私に近付いてきた。そして、私の足にすり寄った!
これは……、
「本物だーーーーーーーーーー!」
私はトラ猫のふわふわな感触に感激しながら、叫び声を上げてしまったのだった。
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