第1話 シーツを這いまわるピンク色の光

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第1話 シーツを這いまわるピンク色の光

 夏なので涼を呼ぶ怪談を…  苦手な人は、どうぞご遠慮ください😱  幼少時、僕の家族は新しい家に引っ越をした。それまでは両親と一緒に寝ていたが、新しい家では自分の部屋を与えられた。四畳半の畳の部屋である。  新しい環境にも慣れはじめた、ある晩のことだった。  僕は自分の部屋で一人で寝ていた。  夜中にふと目が覚めた。横向きなり、なんとなくシーツを見ていると、白いシーツの上をピンク色の光が(大きさは服のボタンくらい)――今でいうところのUFO――みたいに滑っていった。僕が、ピンク色の光をつかまえようとすると、布団の中にもぐってしまう。  子供心にピンクの光が面白くて、布団の中に光を見つけてつかもうとすると、光は驚いた魚のように逃げてしまった。光は、今度は、枕元に出現していて、じっとしている。僕が手を伸ばすと、するりと逃げてしまう。  僕は部屋の電気をつけた。ピンク色の光は消えてしまった。  次の晩、僕はピンク色の光がまた出て来ないか、待ち構えた。恐怖心はなかった。むしろワクワクしていたといえる。  果たして…ピンク色の光は、再び、出現したのである。  しばらくの間、追いかけっこをしたが、ついに捕まえることはできなかった。というか、僕の方が先に眠くなって寝てしまうのだった。  翌朝そのことを母親に話したが、笑い飛ばされてしまった。 「夢でもみたのでしょ?」  たしかに夢かもしれない。  後日、ピンク色の光は、僕を恐怖の底に突き落とすことになるのだが、それもはたして夢だったのだろうか。  数十年たった今でも、僕はその光景を忘れることができない。                              つづく…    
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