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05.
「会社は──社長は、弟が継ぐ事になった」
そう春ちゃんが言いに来たのは、友達という関係になってから、一週間後の事だった。
「俺は、副社長として、弟を支える事にした」
「……そっか」
「えっ!鉄仮面さん、弟さん居たんですか!?しかも、社長と副社長って!!」
お偉いさんじゃないですか!と、相変わらず騒がしい弟子の口を、手で塞いでやる。
「……今日は、シュークリームを三つ」
「家族で食べるの?」
「……弟は、甘い物が苦手だ。だから、あいつには別の物を用意するつもりだ」
「そっか、それば残念だなぁ」
俺の菓子が食べられないなんて。
何て、半分冗談で言ってみると──春ちゃんが少しだけ、笑みを浮かべた気がした。
「佐藤さん、いつの間に鉄仮面さんと仲良くなってたんですか?」
「おっ、仲良さそうに見えた?」
「見えましたよ!しかも鉄仮面さん、少しだけ笑ってたみたいですし!」
「みたい、じゃなくて、笑ってたんだよ」
「ってか、佐藤さん。ひょっとして鉄仮面の人のお名前、知ってるんじゃないですか?」
「知ってるよ。でも、お前には教えてやらない」
「ええ~っ!?」
翼には、まだ鉄仮面の人で十分だろう。
春ちゃん──彼をそう呼んでいいのは、俺だけだ。
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