結末-洸一の場合

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結末-洸一の場合

理は姿を消した。 俺は待ってることしかできなかった。 理と出会ったあの日、俺は映画の撮影が終わったばかりでボロボロだった。 目が覚めて、理の顔を見た時分かった。 俺がずっと探してた人間だってこと。 ゲイバーで再会して、彼の家に転がり込んで、俺は落ち着く場所をやっと見つけた。 失くしたくないから本当のことは絶対に言わなかった。 彼はもう俺の一部と化していた。 そして俺も彼の一部になりたかった。 けど、俺の叔父が彼の心を奪って、そして捨てたことで俺の平穏で幸せな日々は終わってしまった。 彼が出ていって3ヶ月後、連絡があった。 家賃を渡したい。会える? 俺は彼に会いに向かった。 海辺のカフェで執筆してる彼を見つけた時心からほっとした。 「生きてた。」 「死なないよ。」 「もう会えないかと思った。」 「ごめん、なにも言わずに出ていって。」 「好きだ。」 「え?」 「言ったらお前が困ると思って言わなかった。」 「好きだよ俺も。でもそれがお前と同じかわからない。」 「それでもいい。側にいてほしい。」 「...考えとく。」 そう言ってから一年。 俺は一途に彼を想い続けた。 この一年、足しげく彼の元に通い時間を過ごした。 春も夏も秋も冬も、側にいた。 彼の心の傷が癒えるのを待ってた。 仕事で北海道に行くことになった時、彼が付いていきたいというので連れていった。 仕事の合間に観光したり、旨いものを食べに行く。 「なに食っても旨いなぁ。もう腹パンだ。」 ホテルで大の字になりながら幸せそうに笑う。 「明日はみっちり撮影だから付き合えないけど。」 「そっか。じゃあ一人で散策するか。」 「迷子になるなよ。」 「子供じゃないんだから。...まぁ、でもお前がいないと不安だな。というか、」 「ん?」 「寂しい。」 上目遣いで最高の殺し文句を言う。 「なにそれ、誘ってんの?」 「もういいだろ?この一年、お前一回も手だしてこなかったじゃん。」 「まぁ、それはケジメとして。」 「俺から手を出すのはいいんだよね?」 「え?」 そう言うと彼は俺をベッドに押し倒した。 「待て。お前、ほんとに」 「いいよ。この一年、お前と一緒にいて気付いたんだ。お前と一緒にいるときの自分好きだなって。お前がいなくなるとかもう無理だし。」 「それって、」 「強い気持ちじゃなくても、これは好きってことだと思う。」 「俺、頑張った甲斐あった?」 「あった。よく頑張りました。」 「上からだな。」 「嫌い?」 「いや、むしろ好き。」 そして俺たちはまるで初めてみたいに抱き合った。 「相変わらず海の匂いがする。」 「海?」 「この匂い好きだ。」 彼はそう言いながら眠りについた。 海の匂い。 それがただの香水だということは黙っておこう。
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