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確かにそうなるのではと考えたことは一度ではなかったので、ミアは懸命に沈黙を守った。
「人喰いになるには、どうすればいいの?」
「僕が〈源〉を開く。ミアはそこに入って、変化を待つだけでいい」
「〈源〉?」
レインはいつも背後にしていた真っ白な大樹を指し示した。
「この森の、場の〈源〉は、この〈霧の大樹〉。……来て、ミア」
大樹に手をついたレインは、ミアを手招いた。ミアが近づくと、レインの手がするりと大樹に沈む。
驚くミアに、レインは微笑む。
「怖がらなくていい。〈源〉を開いただけ。〈源〉は僕らの〈源〉。僕らの生まれるところ。ここで、ミアも生まれ直せる」
「……記憶とか、なくなったりしない?」
「シェイドは大丈夫だって言ってた」
心もとない言葉だ。けれど、それを信じるしかないのだとミアは覚悟を決めた。
差し出されたレインの手を取る。その手をぎゅっと握ったレインは、そのままするりと大樹の中に入って――つまり、ミアもそこへ招かれた。
大樹の内側――と言っていいのか、そこはまた、濃い霧の中にいるように真っ白だった。
「ここにいるだけでいいの?」
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