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「先生、実際の所どうなんです?」
空いた時間に、ふと看護師が問いかける。
「どうとは?」
「薬の事です。いくらなんでも無茶な内容もあったような気がするんですが……」
「無茶かね?」
「……はい、私の学んできた事とは少し異なるのかなと」
看護師は恐る恐る答える。医者は少し考えて、そして語り出した。
「我々の果たすべき役割は問題の解決ではない。患者の悩みを解消する事だ。悩みが解消すれば、大体の問題は解決する。
患者が欲しているのは問題の解決方法ではない。そのプロセスを偉い誰かが示してくれる事なんだよ」
「……意味が少し分かりかねます」
「こうなる、と言われればそのように信じてそのようになる。そうすれば万事解決、良かったじゃないか。薬効がどうのこうのと、大した問題ではない」
「プラセボ〔偽薬〕って事ですか!?」
つい声が大きくなる。だがここには看護師と医者の二人だけ。誰にも聞かれる事もない。
「色々研究した結果、その方法論に行き着いたのは最近の事だ。信じがたい事だが、実際それで多数解決しているエビデンスがある。それでいいじゃないか。
何、最後の方の彼らも、効果が出るまで飲ませ続ければいいんだ。『遅効性なんです』ってね」
ウィンクする医者に、しかし看護師は同意しかねた。その様子を見て医者は机から何やら取り出した。
「納得いかないようだね。ならこの薬で大丈夫だ。安全性も確認された新薬だからね」
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