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第二章
「呪いの山の五合目には吹雪姫が眠っている。姫を目覚めさせる薬は、王子の熱い愛情だけなのじゃ」
老紳士は深夜の店でカクテルをかたむけ、成人の杉田二郎に昔話を語った。二郎は祖母から同じ話を聞かされて育ったが、いまひとつピンとくるものがなかった。
「おれ女性は間に合ってるから」
「誰も姫を女性だとは言っておらんぞ」
その時二郎は目覚めた。
「そんな簡単なもんじゃないよ」
「決めたんだ」
二郎は三郎に言って呪いの山目指して出発した。
雪山では、冷たく激しい嵐が彼を叩いた。それでも彼は立ち向かった。
「男の子! 成人の男の子! 超タイプ! 成人式から一度も汚れてない清らかな彼! 会ったらチュー! この環境なら暖め合う理由も満載! 幸せにする! 待っててください姫!」
二郎は他の兄弟とはちょっと毛色が違っていた。
彼は山の五合目にたどり着いた。雪の中に縦に置いてある棺を見つけて蓋を吹っ飛ばす。中には美しい男子が眠っていて、次に瞳を開けた。
「姫! 助けに来ました!」
ぱん。
二郎は姫が発砲した銃の前に倒れた。
吹雪姫は、棺の前にうつ伏せに転がる二郎を見下ろした。
ピコーン、ピコーン。
額に巻いたはちまきのボタンが赤く明滅し、時間切れを告げている。姫はおもむろに棺の蓋を拾って棺の中にかくれた。そしてまた長い眠りの時間がやってきた。
(続く)
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