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スコット男爵家へ
翌日、ダニエルは早速ハワード伯爵に話をしに赴き、上機嫌で帰ってきた。
「デミ、ヘザー、喜べ! ハワード伯爵は快くヘザーを受け入れてくれたぞ!」
「本当? お父様! 嬉しいわ!」
ヘザーはダニエルの頬にキスの雨を降らせ、ダニエルも彼女を抱きしめて応える。
「ではあなた、すぐにでも後継者変更の手続きをして下さいませ」
「まあ焦るな。今日は休日だから王宮も事務方は休みだ。それよりスコット男爵にも話を通さねばならん。レティシア、お前も来い」
「私もですか? どうせ決まったことですし、お父様だけでいいのでは」
「スコットには、結婚させるのは金髪で美しく天真爛漫な娘だと説明してあるんだ。赤毛のお前を見て話が違うと言うならそれもやむなし。他の相手を探すまでだ」
「あなた、そんな弱気では駄目ですわ。こちらの方が格上なのです。婚約者が変わろうとも向こうに受け入れさせなければ」
「それもそうだな。では今日は普通に顔合わせということにしよう。レティシア、さっさと支度しろ」
レティシアは重い腰を上げて着替えをした。どうやらデミは、何が何でもレティシアを男爵家に嫁がせたいらしい。
(今まで日陰の身だったことへの鬱憤を晴らそうとしているのかしらね……)
まあいい。自分は身分にこだわりなどない。とにかくこの家から離れたい、今望むのはそれだけだ。
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