帰宅

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帰宅

 俺はいつものように電車に乗る。駅から自宅の最寄り駅までは電車で一時間ほどだ。よくもまあこんなところまで通ってると思う。朝の通勤ラッシュはもう慣れた。夜はこれまたなるべく早く帰らないとラッシュに飲み込まれる。でも今日は少し誤算だった。ジュースを買ってしまったから。 「はあ……、早く帰らないと小夏怒るなあ……」  今朝も何度も念押しされたしな。俺は普段はともかくこの記念日には早く帰るよう心がけている。それに今日は……。  よし、少し遅くはなったが、さっさと帰ろう。  改札を通る。人が多い。階段を上る。人の波が上がっていくみたいだ。俺は人混みが苦手だ。まあ得意な人なんていないと思うが。  階段を上がりきると、もう電車が着く頃だった。 「急げ……!」  ピシャーッ。 「はあ、はあ……」  何とか間に合った。今日はそんなに混んでない。  空いてる座席に座り、一息つく。 「はあ、よかった……」  ブーッブーッ。  あ、俺のスマホか。  俺はポケットからスマホを取り出す。……小夏か。 『早く帰ってきてね』 「わかってますよ、っと」  俺は小夏に返信する。駅まで一時間あるが、俺は基本的に電車の中で寝るようなことはしない。起きられなくなったら困る。早く帰ってやらないと。  ……もうそろそろ駅だな。 「まもなく、秋見(あきみ)駅~、秋見駅~」  お、もうすぐ、着く。と思ったら。頭に何かが引っ掛かった。 「秋見駅~、秋見駅~」  駅に着いた。ドアが開く。  人がどんどん流れるように降りていく。  ピシャーッ。 「……」  電車が走り出した。
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