帽子

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帽子

 階段を降りる。改札を出る。  駅の構内から一歩出たところで、何か落ちてるのを見つけた。 「……帽子?」  麦わら帽子だ。小夏がよく被ってるんだよな。夏になったら。  ……小夏? あ、いけね。  今日、今日、何の日だっけ?  俺は時間を確認する。二十一時。  まずい。急いで帰らないと。でもどうしよう。この帽子。拾ってしまったからとりあえず交番に届けないと。  ブーッブーッ。  またスマホだ。 『今どこにいるの?』  やばい。早く帰らなくちゃ。  けどまさか、雪見駅にいるなんて言えないし。 「ごめん、すぐ、帰る、と」  ほんとにすぐ帰らないと。  交番は……、あそこか。 「って、わ!」  交番に向かおうとしたら暗くて気づかなかった。溝に足がはまってしまった。 「うっ、この……!」  必死に足を上げようとするが周りに持つようなものもないので、大変だった。麦わら帽子を脇に置いて、再度挑戦する。 「ふーっ、よいしょっと!」  何とか足を上げることができた。今ので体力を消耗してしまった。  麦わら帽子を拾い、交番に行こうとしたら、今度は道を隔てて遠回りしないといけないような作りになっていた。  疲れてしまって、あそこまで行くのはちょっと辛い。  仕方ない。明日届けよう。  時計を確認する。もう二十一時半を回っている。  急いで帰らないと。俺は痛い足を引きずって駅へと向かった。
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