シンギュラリティ・クロック

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 レイの目の前にいるのは、人生の全てを捧げて目標を成し遂げた立派な男ではなく、とんでもないことをしてしまって泣いている一人の子どもだった。天才科学者と言われようと、リオの心の時間は兄が死んだ日から止まったままなのだ。  号泣して話の要領を得ないが、未来が大変なことになっていることだけは分かった。タイムマシンの操作法だけは何とか聞き出し、未来への道中、窓越しの景色を見る。暗黒の時代、第一次AI大戦。そして、近い将来完全に世界はRAYの魔の手に堕ちる。  レイが生き残る世界線においてもそれは変わらない。リオは過去が変わり、兄が消えることを恐れて何度でもタイムマシンを作る。行きつく先は暴走列車のなれの果て。未来はRAYが支配する暗黒の世界へと収束する。 「ごめんなさい……」  元の時代に戻ったリオはひたすら泣きじゃくる。可愛い弟が泣いている。レイはリオを強く抱きしめて子供の頃と同じように宥めた。弟を守れるのは自分だけだ。 「大丈夫だ。兄ちゃんが全部なんとかしてやる」
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