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一息つく間もなく、リオはレイが昏睡状態になった日時へとワープする。あの時のレイの苦しそうな顔は今でもリオの脳裏にこびりついている。どうしてもあの日のレイを救いたい。そのためだけに今日まで生きてきた。
病室に到着すると、レイの周りの人間を過去の自分を含めて全員、Rエネルギーで気絶させる。そして、チアノーゼを起こしたレイ紫色の唇にカプセルを押し当て服用させる。
レイの体に繋がれた医療装置がモニターに示していた異常値が正常値へと戻っていく。苦しそうな呼吸は穏やかになり、蒼白い顔は赤みを取り戻した。レイはゆっくりと目を開ける。
「リオ……?」
何千夜に渡って、毎晩夢に見続けた兄の声。レイの身長をいつの間にか追い抜いていたリオの姿を見て、聡いレイは察した。
「リオ、立派になったな。俺のためにありがとうな。リオは俺の自慢の弟だ」
昔と何一つ変わらない優しい手つきでレイはリオの頭を撫でた。
その瞬間、リオは泣き崩れた。兄は悪魔と言う言葉ですら生ぬるいリオの数々の所業を何一つ知らない。2人で夢見た笑顔溢れる世界をこの手で木端微塵に破壊したそんな自分は兄に愛してもらう資格などない。
まだ小さな子供だった頃、ジュースをお気に入りの服にこぼして泣いていた時、自分のしたことの始末は自分でしろと昔言ったのは父だったか母だったか。あの時、服を洗って汚れた床の後始末をしてくれたのが兄だったことだけは覚えている。あの頃からずっと、レイのことだけは無条件に信じることができた。
レイが病気になってから、レイに心配をかけないように、一人で生きられるように歯を食いしばって生きてきた。でも、今度ばかりはもはや自分の手に負えない。
「助けて……レイ兄ちゃん……」
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