運命の相手

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「青草のことだと思うが都を一望できるところに咲いているのがそうだろう。白鬼丸、明日黒檀に連れていってもらえ」 「翠鳳さま、僕も行きます」 「りんは怪我人のそばにいてやれ。獲物を横取りされ鵺がまだ諦めていない。取り戻しにくるかも知れないからな。りんがいれば迂闊に手を出すことは出来ない」 「翠鳳さまは彼が何者かご存知なんですか?」 「何者かまでは知らぬが、誰も近寄らないあやかしの里に一人で何度も来ている。追い返されても諦めない。なかなか度胸がある」 「もしかしたら翠鳳さまにお願いしたことがあったのかもしれません」 「憎いあやかしどもの長である俺を殺したいとだろ?根も葉もないたわことに騙されて。だから人間は嫌いだ。りんは別だがな」 人とあやかしが共存することが出来れば一番いいのだろうけれど、人が先に破ってしまった。 翠鳳さまの立場だってあるのに。ほんとうは男性を助けるべきではなかったのかも知れない。でも怪我をしているひとを見て見ぬふりするなんて僕にはどうしても出来なかった。 「翠鳳さまごめんなさい。男性を助けたことで翠鳳さまの立場が悪くなる。考えてみれば分かることなのに」 「過ぎたことだ。謝る必要はない」 頭を下げようとしたら翠鳳さまの大きな手が肩に触れた。日焼けしたゴツゴツした武骨な手は、畑仕事をしていたおじいちゃんとおばあちゃんの手によく似ていた。会いたくてももう会うことが出来ない。もっともっと長生きして欲しかった。
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