運命の相手

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まわりがこれだけ賑やかでも男性は熟睡していていた。端正な顔には疲れの色が滲み出ていた。目が覚めたら、まずは温かいお粥を食べさせて、それから髪を綺麗に梳かしてあげよう。 おじいちゃんの着流しをおばあちゃんに教えもらいほつれたところを縫い直した経験がまさか役に立つ日が来るなんて。思いもしなかった。裁縫道具である漆塗りの見るからに高そうな針箱は翡翠さまからいただいた。大事にしないとそれこそバチが当たる。 「りんさまは若いのに何でも出来るんですね」 「出来ないことのほうが多いです。勉強だって、成績は後ろから数えたほうが早いし、英語なんていまだにちんぷんかんぷんだし」 「そんなことございませんよ」 浅葱さんが何かに気付きぴょんぴょんと跳ねながら縁側へと向かった。 「雲行きが怪しいですね。ひと雨来そうですね。雨戸を閉めましょう」 「浅葱さん、僕が閉めます。建て付けが悪くて戸がきついから」 立ち上がろうとしたら、 「座ってろ」 顎をしゃくるような低い声がはっきりと聞こえてきて。黒い影が僕の前を風のようにさっと横切っていった。
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