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序 四角の中心
沈黙というのは不意に訪れる。
どんなに楽しい会話をしていても、言葉の途切れたほんの少しの隙間に忍び入る。
たき火のはぜる音と微かな虫の鳴き声、冷たい夜の風。さっきまでは聞こえなかった音が、今は鼓膜を震わせる。
サヴィトリは携帯食の硬いパンをスープにひたしながら、たき火を取り囲むように座っている四人にそっと視線をむけた。
ナーレンダは眉間に皺を寄せ、硬いパンをそのままかじっていた。いらいらしている時のナーレンダはわかりやすい。
ヴィクラムはいつも通りの無表情で、自分の荷物をあさっている。おそらく酒でも探しているのだろう。
カイラシュは怪しく身悶えしていたので、すぐに視線をはずした。こういう時は特に、関わるとろくなことにならない。
ジェイは困ったように眉尻をさげ、スプーンでスープをかきまわしている。最近のジェイは、へらへら笑っているか困った顔をしているかのどちらかだ。
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