酒乱の動揺

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(……抱けば変わるか?)  金銭が介在するしないにかかわらず、一度身体の関係を持つとそこで終わることがままあった。同じ女は二度抱かない、というのはあながち嘘でもない。情の薄い男だと自分でも思う。  あれこれ悩んで職務に支障をきたす前に、さっさとけりをつけてしまった方がいいのかもしれない。サヴィトリとしては非常に迷惑で一方的な話だろうが。 (どのみち、色恋で心乱されるなど隊長失格だがな)  ヴィクラムは再び胃のあたりが痛むのを感じた。飲みたりなかったようだ。  薬酒を取り出し、中身を一気にあおる。今度は傷口にアルコールをすり込んだように痛く染みた。  次期タイクーンに対し、不遜なことを考えた罰か。  とはいえ、性交渉前提で考えてしまうのはクベラ人の性だ。培ってきてしまった国民性はヴィクラム一人のせいではない。 (一度抱いたくらいで終わるなら、最初からこんなに思い悩むこともないか)  ただの娘のようで、野の獣でもあり、いずれ一国を統べる王。  その他にいくつの顔があるのか、そのすべてを見ない限り、悩みは尽きないような気がした。
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