三十路の懊悩(おうのう)

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 カイラシュは、彼の事情をかんがみればサヴィトリを恋い慕うのはある種必然なのかもしれない。カイラシュは幼い頃、第二王妃――サヴィトリの母親に対して強い憧憬の念をいだいていた。その想いが娘であるサヴィトリにもむくのは不思議なことではない。  殴る蹴るの暴行を受けて喜びに打ち震えるのはまったく理解できないが。  ジェイは、一過性の感情で終わると思っていた。  身近にいるという理由だけで好きだと錯覚する子供の恋。そんなものを再燃させるなんて馬鹿げている。初恋など淡い思い出に留めておくものだ。  ……別に初恋が叶わなかったからこんなことを言っているわけじゃあない。  最も意外だったのがヴィクラムだ。  奴の好みからはかけ離れている。ほとんど真逆だ。サヴィトリのどの部分に惹かれたのか、いまだにわからない。  もし、ただの気まぐれだというなら許さない。かといって本気だったとしても、譲る気もないが。
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