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(今の君は何を見ているのさ? 十年前は、僕とクリシュナとハリの森、それだけだった。でもきっと、もう違うんだろう)
さっきから悲観的なことしか浮かんでこない。自分自身が嫌になる。二十前の小娘一人に、いつまで振りまわされているんだ。
無性にサヴィトリを抱きしめたくなった。金の髪を撫で、額にくちづけ、体温を感じたい。今すぐ、犠牲者にでもなんでもなってやる。
もちろん、そんなことができるわけがなかった。
それに、間違いなく妨害される。普段仲が悪いわりに、そういう時だけは奇跡の連携をみせる。
(っていうか、さっきから僕は何をおかしなことを考えているんだ。今日の僕は変だ。理性がうまく機能していない。もしかしたら、誰かが食事に変な物でも盛ったのだろうか。いや、そうに違いない)
ナーレンダはそっと腹部に手を当て、解毒の術を自身にかける。なんの毒かはわからないが、とりあえず一般的な解毒術をかけておけば大丈夫だろう。
ああ、頭が痛い。
サヴィトリといると気苦労が絶えない。
ナーレンダが選ばれても、選ばれなくても、きっと一生サヴィトリには振りまわされる。因果な星のもとに生まれてしまったものだ。
若干の恨みを込めてサヴィトリの方を見ると、泣きそうな顔をして空を見上げていた。
彼女が見ているのは、空か、月か、星か、雲か。
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