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酒乱の動揺
胃が痛い。
胃もたれとも胃酸の出過ぎとも違う。
世の中には精神的な理由で胃をやられる者もいるというが、おおよそ自分には無縁の話だ。大抵のことでは心は動かない。隊を束ねる者として、動揺は禁忌の一つだ。
ヴィクラムは自分の荷物をあさり、中から薬効のある薬草や実を漬け込んだ薬酒を取り出した。
傷や身体の不調はすべて酒で治す。
ナーレンダには馬鹿にされたが、ずっとそうしてきたし、それで治してきた。そういう体質になってしまっているのだから仕方がない。
瓶の蓋を開けると、アルコールと生薬の混じった独特の匂いがあふれてきた。
隣に座っているジェイが顔をしかめるのが視界の端にうつった。慣れていない者にはきつい匂いかもしれない。
瓶に直接口をつけ、適当な量を胃の中に流し込む。すぐに、胃の腑がかっと熱くなる。これだけで胃の痛みがまぎれた。治ったかどうかは別段問題ではない。
飲み口を布でふき、薬酒をしまう。
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