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(動揺は禁忌、か)
意識せず、ヴィクラムはサヴィトリの方に視線をむけてしまった。
サヴィトリは何か物思いに耽りながらパンを食べていた。
戦闘時の苛烈さが嘘のように、ごく平凡な娘にしか見えない。
ヴィクラムはこれまで特定の相手を持ったことがなかった。
魔物討伐部隊である羅刹は遠征が多く、命の危険も多い。もしも恋人や家庭を持ってしまったなら、いざという時に己が身の保身に走り、職務をまっとうできないかもしれない。
もちろん、そうでない人間もいる。
事実、隊には既婚者や恋人がいる者も多い。ただ、自分にはそれが出来そうもないというだけだ。
それなのに、気になる。今までにこんなことはなかった。
美人でもなければ妖艶でもない。髪はクベラでは珍しい金髪だが、それ以外特筆すべきもののない娘。
町ですれ違ったとしても、きっと記憶には留まらない。
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