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ふっと口角を持ち上げる。鳥が空に飛び立ってホッとしたから、ではなく、白に近いグレーのスーツの袖ぐりが、急な動きをしたせいで、縫い目が裂けて穴があいてしまったのに気が付いたからだ。
それにしても、服が破けるというマイナスを微笑みに転換できるほど、今日はいい一日だった。
数年前から開発していた画期的なAIのコアを、他社に先駆けて完成させたので、社内で祝賀式典があり、私は開発リーダーとして、社長からじきじきに表彰されたのだ。
「画一的なAIから、想像力をもったAIへ! これは革命です!」
社長がこぶしを振り上げ、力強く宣言する。
想像力をもったAIと今までのAIとの違いを極々簡単に説明するならば、頓智が解けるか、解けないか、ということだ。
例えば、「その扉は、子供しか通れない。なーんでだ?」「自動(児童)ドアだから」
などという、小さな子供でさえ答えを聞けば笑える頓智が、AIには理解できない。
データを入力して問答を覚えさせることはできるが、知らない問題は解けないし、おもしろみもわからない。
私が開発したAIは、自ら考えることができる。さらにそれだけではなく、感じることさえできるのだ!
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