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上空からドンッという衝突音が、かすかに聞こえた。
ハッと見上げると、鳥が落下してきている。
なぜ……? と疑問に思ったのは一瞬だった。
今、私が出てきた勤務先の高層ビルは、側面が鏡状になっている。青空を映し込んだビルは、まるで上半分が空に溶けているように見える。おそらく勘違いした鳥がビルに激突してしまったのだ。
私は高速で思考を巡らせ解答を得ると、革靴を鳴らし、30メートル程離れた予想落下地点に走った。
ようやく事態に気が付いた周囲の人々から、悲鳴があがる。小鳥が地面に叩きつけられたら、一瞬で肉塊と化してしまう。
グッと手を伸ばし、落ちてきた小鳥を間一髪、キャッチする。
私は周囲の人々に、にっこりと笑顔を向け、礼儀正しく会釈した。目を覚ました小鳥が、手のひらの中でキョトキョトとあたりを見回している様子を見せて、無事を知らせる。
「あの人、誰?」
「システム開発部の江作 了仁さんさ」
「あの人が? 信じられない! すっごく素敵ねえ」
うっとりしている女性たちの感嘆を背中に聞きながら、私は小鳥を空に放した。
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